創業天保元年 吉田屋

PROJECT

『常陸乃梅』のものがたり
Story of Hitachi no ume

茨城の 梅は観て良し 食べて良し

 当店はこの地で200年近く、伝統の味を造り続けて参りました。しかし2011年に東日本大震災があり、継続していくことの意味について、あらためて向き合うこととなりました。もっと社会の役に立つ商いがしたい。そんな覚悟で取り組みを始めたのが、100%茨城県産の梅を使用した商品開発で茨城に新しいブランドを創出する「常陸乃梅」事業です。

 水戸の偕楽園は梅の名所として知られています。観梅の時期には全国からの観光客で賑わいますが、当店の梅干しも、観光地で販売されている様々な梅製品も、その原料となる梅のほとんどは、茨城産ではありませんでした。実は茨城の梅の作付面積は全国で3番目に広いのですが、出荷量はトップ10にも入っていません。それにはこんな理由がありました。

常陸乃梅のものがたり | 創業天保元年 吉田屋

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豊かさゆえの盲点

 梅の実は固くて青い状態から黄色く完熟するまで、日々刻々と変化していきます。商品化するには、加工に適したタイミングの見極めと速やかな処理が重要です。紀州や山梨のような山間部では梅は重要な農産物。一粒も無駄にしないよう農家自らが一次加工場を設け、収穫したらすぐに処理をして出荷する体制が整っています。

 茨城県は何を作ってもよく採れるため、多くの農家は複数の作物を手がけています。手のかかる梅の一次加工はせず青梅だけを市場に出荷するのが主流。注文に応じて完熟した梅を直接業者に納めることもありますが、行き先のない梅のほとんどは手つかずのまま自然落果させていたのです。観光的には梅が目玉でありながら、せっかくの実りを充分に活かせてこなかった。その背景を知って以来、地元の梅で美味しいものを作りたいという夢がますますふくらんでいきました。

吉田屋が見込んだ三種の宝珠

 さて、どうやって地元の梅を調達しようかと考えていたちょうどその頃、運命的な出会いがありました。「露茜」という新品種に挑みながら、その商品化に悩んでいるというJA土浦「千代田梅部会」の皆さんと、まるで引き寄せ合うようにご縁が繋がったのです。梅の品種は全国的にさほど変わりなく、南高梅だけが紀州のブランドというイメージが定着しています。そうした中、開発されたばかりでまだ知名度の低い「露茜」には大きな可能性を感じました。燃えるような茜色の果肉が特徴的で、梅酒やジュースにしてみると発色の素晴らしさは他に類を見ないものでした。美しい茜色に仕上がった商品を見て、生産部会の皆さんもたいへん喜んでくれました。

 その後さまざまな品種を比較検討した結果、2種類の梅に着目しました。1つは4Lサイズの大粒の実が生る「加賀地蔵」。従来は青梅専用に作られていましたが、試しに樹上完熟させて梅干しにしてみたところ驚くほど味が濃く、南高梅をしのぐ出来映えとなることが分かりました。もう1つは受粉樹として植えられていた「石川1号」。これまで一度も商品化の光が当たっていなかったものの、実は奥ゆかしい甘味があり、農家の皆さんが自家消費していた梅でした。こうして梅農家の皆さんと共に、3種類の梅の特性を最大限に活かす商品開発が始まったのです。

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品質

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おいしさを極める約束

 従来は青梅の出荷だけで終っていた梅を、完熟させて商品化するにはシステムを大きく変える必要がありました。栽培技術の指導者を招いて勉強会を開き、農薬や肥料のこと、剪定方法など、統一した栽培基準作りが急務でした。収穫はカラーチャートに照らしながらすべて手作業でと、農家の皆さんにとってはたいへんなチャレンジでしたが、粒の大小に関わらず、基準をクリアした梅は全て買い取らせていただくことを条件に、あらゆる点を克服していただきました。

 そうして出来上がった商品が高く評価されたことが励みとなり、農家の皆さんの生産意欲に結びつきました。今まで薮だった所を開拓して「露茜」を100本植えてくれる方、他の作物を止めて梅専門に変えた方などが現れ、生き生きと美味しい梅を作っていただいています。今後更に生産量を増やしていくために、常陸乃梅プロジェクトの一環として苗木の補助を行い、梅の植樹を進めているところです。 今では厳しい基準の1つでも崩れたら「常陸乃梅」として成立しないということを全員が理解し、むしろそのことに誇りを感じながら生産に当たっていただいています。このマインドなしに「常陸乃梅」の実現はありませんでした。

本物の味覚を皆さまへ

 こうして「常陸乃梅」としての基準をクリアした梅の実は、当店に到着後すぐに洗浄と仕分けが行われ、数種類の天然塩を使い分け、それぞれの塩分濃度で漬け込みます。梅の皮は柔らかく傷つきやすいので一貫して手作業で行っていますが、全ての調理器具は加熱殺菌したものを使用するなど徹底した衛生管理によって、添加物を加えることなく、通常では考えられない低い塩分濃度を実現することができました。

 また一方で、梅の仕事は数字だけで管理できるものではない一面ももっています。例えば天日干しで気になるのは何と言っても空模様です。常に気象予報をチェックしていますが、時には海端に暮らす人間の知恵、雲の様子や風の冷たさで空読みをする古いスタッフの予報の方が的確なこともあります。長年の勘や体で覚えた技術が品質に反映されるところが、また一段と味わいを深くするのです。

 こうして農家の皆さんと当店とが心を一つに合わせてお作りしています「常陸乃梅」は、私たち生産者の誇りと真心そのものです。伝統に培われた技術と明日への希望でできた本物の味覚を、ここ茨城は大洗から、謹んでお届けいたします。

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